「鐘の音」   和尚の一口話       2000年2月1日
 
      第十三話  史上最大の発明   

 
かって人間はどんな民族も自然環境に畏敬の念をもって、自然の
 恩恵に浴していることへの、感謝の気持ちを忘れなかったはずです


 NHKテレビ・BSー2で史上最大の発明という正月番組がありました、これはニューヨーク在住のジョン・ブロックマンが2000年間で最大の発明は何か」と、インターネットで問いかけた、その結果をまとめた本が出版され、テレビ番組になった。ジョン・ブロックマンのインターネットでの問いかけに108人の科学者や技術者が答えをよせました。

 「2000年間で最大の発明は何か」印刷技術、その他さまざまなものがあげられています、その中でロンドン大学経済学部の特別研究員である、コリン・タッジという方が、農耕の犂(すき)だと答えています。人類は食料供給のために、あらゆる生き物を追いやり、自然環境をも著しく変えてきました、人間どうしの殺りくも絶えることがありません、それらもみな農耕の犂(すき)によって食料供給が増大してきたことによるのだとコリン・タッジは言う。


 
人類は3万年の昔から農耕をおこなってきました、一説によれば文化という言葉は、耕すが語源であるとも言われています。 農耕により食料供給を増大し、動物のなかでもっとも恐るべき生き物である人類は今60億を超えました、そして加速度的に地球環境と万物生命滅亡の危機を進行させている。

 地球上の人口は西暦0年で推定2億人、西暦1000年3億人、西暦1800年頃は10億人であったが、それがわずか200年間で50億人も増え、西暦2000年の世界人口は、60億人に達したのです。予測では2030年には89億人2050年にはなんと100億人に爆発的に増加するという。

 そして一方では地球温暖化により、100年後には海面が1メートルも上昇しており、その上、四国と九州とを合わせた面積が、毎年、砂漠化していくそうですから、生産技術が進展し食料供給量は増加するけれども、なお食料不足が極度に深刻化し飢餓と紛争が絶えず、人類は危機的状況に陥るであろうとの予測もあります。


 農耕の犂(すき)は牛馬の力からトラクターへ、そして肥料と農薬が大量に投入され、農耕技術が向上してくると、作物は自然の恩恵によるものでなく、人間が生産したものだと思うようになった。

 人間は自然の恩恵によって生かされている、人も、生きとし生けるもの皆共に、地球環境に育まれ、命を子孫に受け継いできた。かって人間はどんな民族も自然環境に畏敬の念をもって、自然の恩恵に浴していることへの感謝の気持ちを忘れなかったはずです。

 食料供給の増加に伴い人類の数が増大し、生産技術力を高めることによって、もはや人間は自然の生き物ではなく、特別な存在であるとの思い上がり、錯覚に陥ってしまったのではないか。この傲慢な人間の意識は、地球環境をすべて支配する生き物だとの思い込みから、自然環境を思いのままに破壊し続けてきました、その上人間は互いに争い、戦争が絶えません。

 飽食の時代と言われて久しい現代の日本では、食料の30%が捨てられているそうです、これは食料資源の浪費のみならず地球環境にも負荷を与え続けています。

 不知足の者は、富めりといえどもなお心に貧し 2500年前、お釈迦様は、命尽きるいまわのきわに至るまで繰り返し説かれた。

 だからこそ道元禅師も750年前、亡くなる直前の最後の教えとして、少欲知足・足るを知る心をもてすべからく貧なるべしと、お釈迦様の言葉をそのままに、最後の教えとして、後世の人々に説き示されました。

 天地自然に畏敬の念を抱き、感謝の気持を忘れない謙虚な姿勢、少欲知足、足るを知る心こそが21世紀の人類と自然を救うことを子供達に教えていきたいものです。
 
 現代はお釈迦様や道元禅師の時代とちがい、地球規模での人口爆発と環境破壊が進行していますから、ことはもっと深刻で複雑多岐にわたっており、一国の枠を超えた人類共通の問題です。
 ささやかな希望の小さな一歩であっても、あなたの行動が、生き方がそれを決めることになります。

   少欲有る者は、すなわち涅槃あり、これを少欲と名ずく
   諸々の苦悩を脱せんと欲すれば、当に知足を観ずべし
   知足の法は、即ち是れ富楽安穏の処なり

      
          
「少欲 知足」は人類史上最もすばらしい言葉です

               (2月15日はお釈迦様入寂の日)


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