2009年3月1日  第122話
         気は力なり      
     
     
  色即是空・・・・・人はだれでも諸々の条件が備わったからこそ
                      はじめてこの世に生まれ、存在しています
       
            
そしてさまざまな条件に支えられているからこそ
                    人は生きていけるのです・・・・・空即是色
      
      

あなたは今、輝いてますか?


 春は名のみの風の冷たさと歌にありますが、お彼岸過ぎまでは風も冷たく、木々の芽ぶきはもう少し先のようです。それでも草の芽はのびて、さまざまな花が咲きはじめました、春三月は命が輝きはじめる季節です。
 水ぬるむ春をむかえて、人々の心もなごみます。あなたは今、輝いてますか? 
あなたは今、ご自身の命を輝かせていますか?と、たずねられたら、どう答えますか?

 無邪気にたわむれる子供たちの姿は、みんな生き生きと輝いています、仲良く寄り添う恋人たちはキラキラとまばゆいばかりに輝いています。仕事に励む人々にはエネルギシュな輝きが、ひたすらに一つのことに打ち込む人々の姿には充実感に満ちた輝きがあります。ところが、命の輝きを失いつつある人も多く、100人のうち1~5人はうつ病などで心療内科に通っているそうです。

 人生に絶望して、自ら命を落とす人が最近11年連続して毎年3万人をこえています。悲しいことですが、自分で命を絶つかもしれないという、悩みの深い人々がその何倍もいると予想されます。しかも先の見えない深刻な経済不況ですから、経済的理由で悩み苦しむ人々が急激に増えています。

 現代人の悩みで最も多いのが健康問題です、次が経済・生活問題、さらに家庭問題だといわれています。
 自殺の原因・動機でも病苦によるものが最も多く、うつ病などの健康問題です。そして景気悪化にともなう経済・生活問題、中でも多重債務や生活苦、事業不振によるとみられる自殺が目立って多くなってきました。しかも、最近ではこれらの原因・動機が重なっているようです。若い人の自殺が増えてきたことと、底の見えない経済危機によって、生きることに絶望してしまう人がさらに増えるのではと、気がかりです。

ストレス社会に生きる現代人は何らかの精神的な不安や悩みを抱えています

 人生とは?人は何のために生まれてきて、何のために生きているのでしょうか?
ひと昔前の人生50年の時代では、子供を生み育てることが人生のすべてでした。子供が成長する頃には親は寿命がつきて死んでいったのです。ところが人生80年の長寿の時代になった今では、子育ての終りが人生の終わりでなく、子育てを終えてもなを30年も生き続けるようになりました。

 少子高齢化時代といわれる現代では、人々の生き方についての思いはさまざまです。男も女も子供を生み育てることを人生の第一義としなくなり、それぞれの自己満足を充足することを生きがいとするようになりました。おたがいに自己流の価値観をもって生きようとするから、親子や夫婦の間でも、社会での人間関係においても、それぞれが異なる自己満足の充足をめぐってさまざまな葛藤が生じてしまいます。

 なんらかの刺激で体内におこる防衛的反応や精神的緊張のことをストレスといいますが、家庭生活においても、職場でも、地域社会でも、ストレスを感じながら生きていかなければならないのです。
 ストレス社会に生きる現代人は悩み苦しみの原因を他に求めたがります。親や家族、会社や同僚、上司など、他が変わらないかぎり自分の悩みが解消されない、などと思いこんだり、他のせいにしてしまうから、悩みは複雑です。
 また、ことさらに自分を卑下したり、ひきこもってしまう人も多いようです。いじめや、メールなどによる誹謗や中傷、非行、薬物乱用、犯罪などの青少年の問題行動も、ストレスがもとで起こす行動と考えられます。

 人々は何らかの精神的な不安や悩みを抱えて、日々落ち着かない生活をしています。ストレスが解消されないと、精神的な不安や悩みはさらに深刻なものになり、体調までくずしてしまうと家庭崩壊や人生の破滅につながります。
 穏やかな日々の暮らしには生きていけるだけの衣食住が必要です。ところが経済危機のもとでは生活不安を感じざるをえません。健康で長寿であることを願うけれど、長生きすればそれだけ老化の苦しみがともないますが、介護や年金の先行きが心配です。

心ここにあらず

 あなたは最近のご自分の変化に気づいていませんか?
無気力でやる気が起こらない、気分が落ち込みやすくなった、眠れない、熟睡できない、めまい、動悸、吐き気、息苦しさ、憂鬱感、おっくうな気持ち、なんとなく身体がだるい、肩こりや頭痛がとれない、腰が痛い、胃が痛い、食欲とくに朝食が食べられない、いつも不安を感じるイライラする、物事に集中できない、ためいきばかりつく、自信が持てない、人と会ったり話したりしたくない朝になると気持ちが悪い、起き上がるのがつらい

 あなたは、いくつあてはまりますか・・・?
 


 健康に気をつけたり、休養や癒しによって、ストレスは解消されていくものです。ところが最近の自分の変化に気づいていても、そして何らかの心身の不調を感じていながらも、日々変わらずに生活をしていますとストレスは蓄積します
 そして、近親者の死、引っ越し、退職、転勤、昇進、職務内容の変化、過酷な業務による過労、出産、育児等、とつぜん襲ってくるこうしたストレスの大波をかぶると、日頃のストレスの蓄積が誘因して、より深い悩みにはまってしまいます。こうして心の病や体調不良に陥ってしまう人が多く、これは誰にでも起こることです


 ストレスの蓄積によって、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンなどをコントロールするセロトニンや自律神経の働きが悪くなり、バランスが乱れて不安定な気分になったり、無気力感やうつの症状があらわれてくることがあります。ご自分の変化に気がついたなら、すぐに専門医に相談して初期治療が必要です。
 家族や親しい人が何らかの変化に気ずき、悩みを聞いてあげたり、相談にのってあげたりすることも大切なことです。


 現代人の悩みの多くはストレスが原因だと考えられています。今の生活で悩みのもとであるストレスから逃れられないのなら、その生活を根本から変えてみるべきです。
 こういう不況下ですから、転職や休職は意のままにならないでしょうが、仕事に原因があれば仕事の仕方を変えてみる、思いきって職場を変えることも必要です。
 これまでとちがった考え方、生き方をすれば楽に生きられるかもしれません。これまで過ごしてきた生き方を変えて、思い切って別のレールに乗り換えてみるのも、一度しかない人生の選択です。

 気は力なり・・・もっと気楽に・・・いい加減に生きられたら、悩むこともない

 「人生は糾える縄の如し」と言います、喜びがあれば悲しみが、苦があれば楽がある、人生は悲喜こもごもです。はたして、人は悩み苦しみがなければ、幸せでしょうか?
 今、生きているから、人は悩み苦しみもする。悩み苦しみがあるのは、生きているからです、だから安心して悩めばいいのでしょうが、一つの悩みが解消できても、またあとから、次々と新たな悩みが生じてくるものです。そこで逆転の発想で、悩みのおかげで生きる意欲や希望が持てるのだと、笑顔で達観できればいいのですが。

 人体は絶えず生まれたり死んだりしている60兆個もの細胞の集合体です。本来なにものにも執着しない生命体(仏性)であるはずなのに、貪(むさぼり)瞋(怒り)、癡(愚かさ)三毒の心のおもむくままに生きてしまうから、あらゆることに執着してしまう。この執着心が煩悩であり、ストレスを引き起こす原因です。人は自分自身でストレスをつくってしまうのです。
 人はだれでも諸々の条件が備わったからこそ、はじめてこの世に生まれ、存在しています。そしてさまざまな条件に支えられているからこそ、生きていけるのです。ところが人はなにごとにつけても自己中心的に認識しょうとするから、ことさらに執着して自分自身で悩み苦しんでしまいます。

 執着しないで、 いい加減に生きることができれば最良です。いい加減に生きるとはチャランポランではないけれど、風呂の湯で喩えると熱からずぬるからず、ちょうどよいぐあいというところでしょう。執着しないで、いい加減に生きるというのが、なかなかむつかしい。気楽に生きる、自分らしく生きる、身の丈に合わせた生き方をする、背伸びしない、この開き直りが大切です。

「気は力なり」です、もっと気楽に生きることです、癒しによってストレスは解消されます。背筋のばして姿勢を正し、肩の力をぬいて、息をゆっくり吐く呼吸法を、一日数分でもいいからこころみてください。煩悩が滅却し、悩み苦しみのない本来の自己(仏性)にたとえ一時でもたち帰れます。
 百年に一度といわれる未曾有の経済不況下にあって、一年先はおろか明日も見えないと嘆き悲しむよりも、一度しかない人生です、いつも笑顔で、もっと気楽に生きたいものです。そして、人は一人では生きていけません、お互いを思いやったり、励ましあったり、助け合ったりしないと生きられないようです。

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