2017年8月1日 第223話 |
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苦悩なく生きる術 |
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世の中は、なるようにしか、ならぬものなり |
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「人生の標準時計・苦悩なく生きる術」 悩みもなければ苦しみもないという人は、たぶんいないでしょう。なんの悩みも心配ごともありませんという人がおられたとしても、その人の考え方というか、生き方がそうさせているのであって、生きているかぎり、なんらかの心配ごとや悩みごとはだれにでもあるはずです。 愚僧が悩みごと相談を受け始めてより二十年が経ちましたが、インターネットが人々の情報源、通信のツールとして広がっていくにつれて、悩みごと相談の件数も増加してきました。とりわけタブレットやスマートフオンの普及によってその件数が著しく増えました。 「心の悩み・人生相談」のキーワードで検索して、悩みごとを聞いて欲しい、そんな相手先を求めて愚僧のところへ電話やメールで相談をお寄せになります。お悩みの解消にならないかもしれませんが、聞かせていただくことで、ちょっとでも気持ちがやすらぎ、落ち着きが取り戻されていけばと思い、応対させていただいております。 これまでにお受けした多くの悩みごと相談をもとに、苦悩なく生きるということはどういうことなのか、どうすれば苦悩なく生きていけるのだろうか、そういう問いかけに答えるべく、「人生の標準時計・苦悩なく生きる術」という本を今月中旬に出版しました。 |
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人間関係の悩みが最も多い 「心の悩み・人生相談」では、だれにでも共通するお悩みごともありますが、お一人ごとに異なるものばかりです。したがってお悩みごとの内容はさまざまです。人間関係のことが最も多くて、職場、家庭内、夫婦や男女のこと、兄弟や身内、ご近所とのことなどいろいろです。 いじめやパワハラ、金銭問題、仕事、宗教、暴力、介護、恋愛、相続、別れ、病気治療等々のことなど、生活のさまざまな事柄が絡みあっていますから、深刻な精神疾患におちいってしまい、うつ病状態が解消されないとか、心の病や引きこもりで苦しんでおられる方が、愚僧に苦しい胸の内をお話になられます。 私ばかりがなぜ悩んだり苦しんだりしなければならないのだろうか、あの人の存在が私の悩み苦しみの原因だとか、あの時こうしておけばこのようなことにならなかったのでは、などといってみても悩み苦しみは解消しないでしょう。原因を他にもとめたり、苦しみから逃げないことです。 なぜこの苦しみが生じたのか、その苦しみが消滅するとはどういうことか、苦しみと向き合うことが悩み苦しみの消滅につながります。そして過ぎ去ったことをいつまでも引きずってみても、過去から逃れられず、かえって未来の心配をするばかりです。 |
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どのような悩み苦しみの迷路であろうとも、抜け出せる いずれの苦しみであっても、解消するのは自分自身ですから、人格的な能力が決め手になります。したがって人格の向上をめざすことで悩み苦しみも少なくなるでしょう。そのために向上心を鼓舞して自己の人格を高める努力を日々怠ってはならないのでしょう。 「人間」という意味は「世の中」です。だから世の中に必要とされる自分であるべきだということでしょう。そのためには慈悲心を育み、世の中が必要としていることで、自分だからできること、それが何であるのかを見つけて、利他行の実践を心がけたいものです。 まずは悩みの現実をそのままに受け入れて「どのように悩みや苦しみと向き合うべきか」そこから考えてみましょう。そして、「生き方上手の術(すべ)」が見つかれば、それが悩み苦しみの解消のための知恵を引き出すヒントになるでしょう。 一つの苦しみや悩みが解消できても、また新たな悩みや苦しみが生じてきます。それで、悩み苦しみともうまくつきあっていける、そういう生き方上手になれたらよいのですが、はっきりいえることは、どのような悩み苦しみの迷路であろうとも、抜け出せるということです。 |
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世の中というものは、なるようにしかならぬものなり 人は生かされているから、自分の意思によらずとも心臓は鼓動しており、脈をとると血液の流れが感じ取れ、確かに自分は今、生きているということを実感します。このコチコチと伝わってくる心臓の鼓動を「命の時計・人生時計」とよぶことにします。 そしてこの時計が狂うことなく、止まることなく、動き続けてほしいと願います。でも永久的に動き続けるものでないことを、だれもが知っていますから、より長く動きが止まらないようにと願います。また狂うことなく常に正確であってほしいと願います。 それでは正確に保たれるにはどうすればよいのかということです。通常、時計というものはそれぞれ自分の都合で時刻をあらわすのでなく、何人(なんびと)にも、どの国でも同じでなければということで、世界標準時を基準としています。 「命の時計・人生時計」も正確であるためには、標準になるものがあるはずです。それを「人生の標準時計」とよぶことにしました。そして、この標準時計とはどのようなものであって、何を指し示しているのかを知ることで、生き方をそれに合わせることができるでしょう。 「世の中というものは、なるようにしかならぬものなり」と思えるようになればよいのでしょう。そのために、向上心と利他心を生き方の基本として、自分の生き方をすこしでも変えていきたいものです。 「生き方上手の術」を身につけて、悩み苦しみと上手につきあい、悩み苦しみの迷路から抜け出して、幸せな日々を生きて、人生が意義深いものになるようにと願いたいものです。
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