2024年9月1日 第308話
             
無事

   すべての束縛を断ち切り、怖れることなく、
   執着を超越して、とらわれることの無い人、
   かれをわれは、バラモンと呼ぶ
                     
法句経・397


悩みという病

 人はだれでも悩みや苦しみをかかえながら日々の生活をしています。仕事や学校での悩み、人間関係や家族のこと、子育てのこと、経済的なこと、恋愛や、男性または女性ならではのこと、自分の性格や身体のことなど。このように悩みには身体的な悩み、精神的な悩み、経済的な悩みなど色々です。そしてそれらは単一であったり、様々な悩みが複雑に絡み合っているものもある。

 愚僧がネットで「心の悩み・人生相談」のキーワードでお悩みごと相談をお受けしていますが、一番多いのが人間関係から生じることがらです。人間関係の悩みは尽きないようで、人の悩みのほとんどが人間関係です。人間関係で悩んでいる人の姿は次のいずれかが多いようです。「対人意識過敏」「過去を引きずる」「悩みの根源を他とする」というのが、悩む人の特徴のようです。

 だれでも自分が一番大切で他人のことまでかまっていられないというのが本音だから、他の人のことなどそれほど気にかけていないのですが、自分が注視されているとか、関心をもたれていると思い込むことで、自分を悩ませてしまうようです。そして他の人の存在が悩みの根源であると思ってしまいます。そして過ぎ去ったことをいつまでも引きずっていると、今が、そして未来までもが不安になってしまうのです。

 だれでも自分が一番大切だから、自分ファーストで、自己中心(利己)の行動をとってしまいます。自己中心に行動することが人間関係で悩みが生じる根源だということでしょう。

 悩むとは、苦しみ思いわずらうということで、身心ともに病むということです。身心一如だから、精神的な病は身体の病を、身体が病むと精神的にも病んでしまいます
人間関係の悩みから、精神疾患になって苦しんでいます。そういうお悩みごとを聞かせていただくことが多くなりました。

悩みの元は自分にあり

 だれもが自分が一番大切だと思っていますから、自分本位に行動しようとします。親子であっても自と他です、お互いがそうだから、必然的に人間関係がしっくりとしなくなります。それがストレスとなり、身心一如ですから、精神的に病むと身体まで病むことになる。悩み苦しみが深刻なものになると、挫折して立ち上がれなくなってしまいます。

 私たちは自我の欲望のおもむくままに利己的な生き方をしているから、悩み苦しみを自分自身でつくってしまい、それがストレスの原因になっているようです。
 ストレスは身体の疲労や精神的な圧迫感によって体内に起こる歪みです。現代人は職場でも、学校でも地域社会でも、家庭においても、日々何らかのストレスを感じています。


 社会生活をしている限り、日常的にストレスから逃れることはできません。ストレスが原因で精神的な不安や悩みをかかえて日々生活をしています。ストレスにつながらない強靱な精神状態を保てればよろしいが、なかなかそうもいきません。ストレスが解消されないと、精神的な不安や悩みはさらに深刻なものになり、身体まで壊してしまい、悪くすると家庭崩壊や人生の破滅につながります。

 人はどうして悩むのでしょうか、今風に言えばなぜメンタル不調に陥るのでしょうか。自分の悩みの原因が他にあるとすれば、他が変わらないかぎり悩みは解消しないことになります。そうでなく、悩みの元は自分自身にあるのですから、自分の生き方を変えることで悩みは解消するでしょう。悩みの根源は自分の身口意(しんくい)より生じる三毒、すなわち貪・瞋・癡(むさぼり、いかり、おろかさ)で、これを煩悩といいます。煩悩とは身心を悩ますいっさいの欲望であり、煩悩が苦そのものです。

生活改善

 お悩み相談の電話をかけてこられるお方に「ロダン作考える人」をイメージできますかとおたずねしますと、ほとんどの方が知っておられて「はい、できます」とお答えになります。それで、あなたの姿勢はいかがですか、背中を丸めていませんか、肩肘張ってかまえていませんか、頬杖してうつむいて考え込んでいませんか。あなたの今の姿は「ロダン作考える人」そのものではありませんかと問いかけます。

 その姿を続けているとますます沈んでいきます。そして苦しさが増すばかりです。だから、その姿勢にならないように心がけましょうといいます。
 そしてそうならないための方法をお伝えすることにしています。
 それは、
一、常に背筋伸ばして姿勢をよくする。
二、肩肘張らずこだわらず、かまえず、自然体で気楽にする。
三、呼吸を整える。お腹の下の方にちょっと力をいれてゆっくりと息を吐く、そういう吐くことを意識した呼吸法で、呼吸を整えましょう。
 いつでも、どこでもできるから、この三つをセットにして、一日に何度となくこれを行えば精神的におだやかになれます。このようにおすすめしています。


 また、過去をひきずっている人には、一呼吸で自分の体は新陳代謝して新しい私になっていくから、頭の認識も新陳代謝して、ことさらに過ぎ去ったことを引きずらず、読んだ古新聞を処分するように、どんどん捨て去ることが肝心であるとアドバイスします。


 笑顔になれない人には、朝の洗面の時に自分の笑顔をつくって鏡に映し、それを今日一日の顔にして、笑顔の私になりましょうといいます。そして快眠快食快便につとめましょうと、生活改善をおすすめしています。


おもしろくない日々を、おもしろく

  生きていかねばならないから、今の、この苦しみや悩みを解消できればそれにこしたことはありません。けれども、内容によってはいかんともし難く、解消の見込みが立たぬものもあるでしょう。そういうものには、その悩み苦しみと上手につきあっていくしかありません。

 どのように悩みや苦しみと向き合うべきかということについて考えてみましょう。それには、自分とはつまらない人間だなどと自分を卑下しないことです。なんのとりえもない無能なもので弱い人間であると思っている人にも、個性という素晴らしい能力があるはずです。このことを日常生活での心得としましょう。

 「生き方上手の術」が見つかればとても意味のあることです。その「生き方上手の術」が悩み苦しみの解消のための知恵を引き出すヒントになれば、「世の中というものは、なるようにしかならぬものなり」と楽観できるかもしれません。たとえそうでなくても、悩み苦しみと上手くつきあっていける、そういう生き方上手になれるかもしれません。


 心配や悩みがあっても、「世の中というものは、なるようにしかならぬものなり」と思いこんでもよいのではないか。あれこれ考えたり、心配したり、悩んだりしていても、どうにもならないことが多いから、気楽にわりきってしまえば気持ちも楽になるかもしれません。「おもしろくない日々を、おもしろく、するは己れの心なり」ということでしょう。



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