2025年3月1日 第314話
             
虚明

     この生死は、即ち仏の御いのちなり。
    これをいとひすてんとすれば、
    すなはち仏の御いのちをうしなはんとするなり。
    これにとどまりて生死に着すれば、
    これも仏のいのちをうしなふなり。
    仏のありさまをとどむる
なり。
    いとふことなく、したふことなき、
    このときはじめて仏のこころにいる。

                            正法眼蔵・生死



長寿社会といえども、どのように生きるかが課題です

 長寿社会になりました。厚生労働省によると、2024年の日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.14歳です。平均寿命は毎年少しづつではありますが延びています。また女性の平均寿命と男性の平均寿命との差は、わずかながら拡大しているようです。

 そして、生存年齢について、2023年の厚生労働省の簡易生命表によりますと、80歳まで何割の人が生きているかということですが、80歳までの生存割合は男が62.
%、女が81.%となっています。90歳まで生存する人の割合は 男性 260 %、女性 501となっています。

 現在65歳の人が20年後の85歳まで生き続けられる確率について、男性が54%、女性が75%となっています。女性に比べて平均寿命が短い男性でさえも半数を超えていますが、現在65歳の人は85歳になるまでに男性の46%が、女性の25%が死亡するということです。
 65歳の人が25年後の90歳まで生きられる確率について、男性は3人に1人近く、31.%、女性は半数以上の55.%となっていますが、現在65歳の人は90歳になるまでに男性の68%が、女性の44%が死亡するということです。


 健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間をさします。平均寿命と健康寿命との差、つまり平均寿命から健康でない期間を差し引いたものが健康寿命ということです。令和4年での健康寿命は、男性72.
57年、女性75.45年です。
 長寿社会になったといえ、何歳まで健康で生きられるかということ、そして、老いも若きも長寿社会をどのように生きていけばよいのか、年齢相応の生き方について考える、それが長寿時代を生き抜く課題です。


人生三万日を生きる

 現代の日本人のライフスタイル、すなわち生き方について、一万日という区切りで見ると、はっきりとイメージできそうです。
①人生の第一ステージ、0~10000日生きると27歳になる。
   誕生して親に育てられ、教育を受けて成人し、大人になる。
   仕事もするし恋もする。
人生の第二ステージ、~20000日生きると55歳になる。
   伴侶を得て結婚し、家庭を持って夫婦生活をいとなみ子供を産み
   育てる。自己の能力を発揮して社会に役立つ仕事をする。
   充実した人生のもっとも輝く時期です。
人生の第三ステージ、~30000日生きると83歳になる。
   第三ステージの生き方が人生の良し悪しを決定づける。充実して
   いれば幸せな人生となる。高齢化社会の課題がここにある。
人生の第四ステージ、 ~40000日生きると108歳になる。 
   第四ステージは「おまけ」です。


 古代インドには四住期といって人生を四つに区切って、学生期、家住期、林住期、遊行期、の四つのステージで生きることを理想とする考え方がありました。
 学生期  勉学に励み、禁欲の生活をおくる
 家住期  結婚して子供を育て、神々をまつり、家の職業に従事する
 林住期  家長が一時的に家を出る、
       それまでに果たし得なかった夢 を実行に移す
 遊行期  一時期を経て家に帰るのですが、聖
(ひじり)となれば
       もとの生活に戻らないで遊行の生活をおくる

  孔子は人の生き方を次の言葉であらわされた。
  
孔子曰く、吾十有五にして学に志す、
  三十にして立つ、
  四十にして惑はず、
  五十にして天命を知る、
  六十にして耳に順ふ、
  七十にして心の欲する所に従いて矩を踰えず。

 
現代の日本人は百年前に生きた人たちと比べると、一万日長く、二倍の人生、三万日を生きるようになった。そこで現代人の一万日に、古代インドの四住期と、孔子の言葉を当てはめてみました。
 0 ~27歳    一万日  学生期   吾十有五而志於學   
 28~55歳   二万日  家住期   三十而立 四十而不惑   
 56~83歳   三万日  林住期   五十而知天命 六十而耳順
 83~108 歳   四万日  遊行期   七十而從心所欲 矩不踰

 長寿の時代になって、日本人は三万日を生きることになりました。一万日ごとに区切って、それぞれのステージでの生き方を考えてみてはいかがでしょうか。そして古代インドの四住期と、孔子の言葉を参考にして、人それぞれの思いや考え方を合わせていくと、長寿時代の生き方が見えてきそうです。時は人を待たず、今すぐにそれぞれの生き方を考えてみてはいかがでしょうか。


咲き終えて、ぽたりと落ちし、寒椿

 椿という字は、木偏に春と書きます。寒い時期に凛として咲いている姿はとても美しい。そして早春に咲く椿は春の到来を告げているかのようです。「咲き終えてぽたりと落ちし寒椿」と古歌にありますが、花びらを散らすことなく、散り際のいさぎよいさまも、美しいと感じられるところでしょう。
 「咲く花の枝にもどらぬなげきとは、思いきれども思いきれども」と、小林一茶が詠んでいますが、咲けば散る、生まれたら必ず死ぬ、これが浮き世のならいということでしょう。

 生れてきたら必ず死ぬということは、人生最大の不思議であり課題です。子供の頃は死を恐怖と感じないけれど、成長するにつれて肉親や他人の死を目にすると、人は死に対して関心をいだくようになります。老若にかかわらず、人間は死を意識します。けれども、他人の死を識ることができても自分の死を識ることはできない。だから死を恐れ、そして、死の恐怖からのがれるすべがあるのだろうかと思います。

 老いと病についても、死につながることから恐れます。すなわち生老病死を苦ととらえるのです。私たちには生老病死というのがれられないことに対して、不安な気持ちをいだきます。何かにすがったり、何かに没頭することで、その苦しみを一時でもよいから忘れていたいと思い、非日常的な行動をしたり、宗教にのめりこんで念仏や祈りにより安心感を得ようとします。それは一時の気安めになるけれど、のがれることはできないのです。

 長寿社会になりましたが、高齢になると二人に一人は癌になるといわれています。高齢者は癌の進行が遅いというけれど、いずれは死ぬのですから、死にたいする心構えをどのようにすべきか、穏やかな死をどうすればむかえられるであろうか、こういうことに関心を向けます。
 生老病死は苦であると受けとめるのか、自然の有り様であるからそれは苦でないと認識するのか、とらえかたによって生き方が大きく変わるでしょう。苦であるととらえることは迷いであると、般若心経は説いています。


生死としていとふべきもなし、涅槃としてねがふべきもなし

 道元禅師の著わされた正法眼蔵の生死の巻きに、人の生き方を考える上で、参考になる言葉がいくつかあります。
 「生死の中に仏あれば生死なし」
 これは「生死の中に仏あれば生死なし」「生死の中に仏なければ生死にまどわず」という夾山善会と、定山神英の言葉を合わせて、一つにされたものです。生死流転すること、そのままが真理の現成であり、生死のほかに真実はないという意味です。

 「この生死は、即ち仏の御いのちなり。これをいとひすてんとすれば、すなはち仏の御いのちをうしなはんとするなり。これにとどまりて生死に着すれば(執着すれば)、これも仏のいのちをうしなふなり。仏のありさまをとどむる(仏の外形をとらえているにすぎない)なり。いとふことなく、したふことなき、このときはじめて仏のこころにいる」
 「ただ生死すなはち涅槃とこころえて、生死としていとふべきもなく、涅槃としてねがふべきもなし。このときはじめて生死をはなるる分あり」 
 生死がそのまま真理であるから、生死に迷い執着するなにものもないと説かれた。

 「仏となるに、いとやすきみちあり、もろもろの悪をつくらず、生死に着するこころなく、一切衆生のために、あはれみふかくして、上をうやまひ下をあはれみ、よろづをいとふこころなく、ねがふ心なくて、心におもふことなく、うれふることなき、これを仏となづく、又ほかにたづぬることなかれ」
 道元禅師は、まことに簡潔な言葉でもって人の生き方の基本を説かれています。

 虚明とは、生あれば死あり、ただそれだけということです。生死とは人の真実の姿のあらわれそのものであるから、ことさらに生死に執着すべきでないと、道元禅師は正法眼蔵の生死の巻きで説かれました。長寿時代とは、長生きできる時代のことですが、寿命の長短にかかわらず、身命を大切にして、只今を生ききることが、生死をはなれるということでしょう。

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