2026年4月1日 第327話
             
不確実性の時代

   勝つ者、怨みを招かん。他に敗れたる者、苦しみて臥す。
  されど、そのいずれをも棄て、こころ寂静なる人は、
  起居ともにさいわいなり。 法句経201


2026年は波乱の年になるのでしょうか


 
今年に入り不確実性の時代の到来を連想させるさまざまな事件が起こっています。新年早々に世界に衝撃を与えたアメリカによるベネズエラ攻撃では、独裁政権を率いていたニコラス・マドウロ大統領が、アメリカ軍の奇襲作戦により家族とともに拘束され、アメリカに送致された。中国とアメリカとの石油利権が絡んだ事件でもあり、世界中の驚きと関心がよせられた。

 1月下旬には中国において、政変に繫がりかねない事件として、軍部の最高指揮官が拘束されて消息不明とのニュースが流れた。中国政治の中心である共産党幹部の二人が粛正されたということで、これは中国内部のことであるけれど、中華人民共和国による台湾への軍事攻勢につながることかもしれないという憶測から、東シナ海の不安定要因として、その動静が日本では大いに注目されている。一方中国の国内では繁栄を続けてきた中国経済が未曽有の低落の迷路にはまりこみ、他国間のみならず、国民からも信頼失墜に見舞われている。

 日本では、これも1月に
高市総理が衆議院を解散した。そして2月に総選挙が行われた。高市政権の施政評価を国民に問うという大義名分を掲げたものであったが、少数与党による国会運営の困難さを是正するという思惑があったようです。野党勢力は準備体勢が十分でなかったので、にわか仕立ての中道改革連合という新党を結成して選挙に臨んだが、与党の圧倒的勝利という結果となり、中道候補者の多くが落選した。安定政権の誕生ということで、不安定要因がなくなったかのようですが、民意の反映ということにおいてはどうでしょうか。

 2月末にはアメリカとイスラエルがイランを攻撃して最高指導者ハメネイ師およびイラン政治の幹部たちを殺害した。そしてイラン各地の軍や政治の拠点が広範囲に攻撃を受けた。これに対してイランも反撃し、アメリカ軍施設のみならず、戦火が中東各地に拡大した。民間施設にも被害がおよび、戦禍が拡大している。ホルムズ海峡が事実上封鎖され、タンカーの航路が断たれたので、原油価格が高騰し、経済への影響が懸念される。戦争が終結するための条件が不明確であるため、長引くのではとの憶測がながれている。


情報媒体と、双方向受発信の変化

 日本国内では、年明けから雪の多い地域では豪雪にみまわれるなど、気象の上での激甚災害に匹敵する雪害が発生した。南海トラフなど、大規模地震の発生や、天変地異の不安もあり、国民の多くが自然災害の発生についての心配を大なり小なり意識しています。

 日本では地震の発生や気候による災害が毎年のように日本列島のどこかで発生しているけれど、国内に生活しているかぎり、戦争の恐怖に当面の間はさらされることがない。したがって三方を核保有国に囲まれているのに、国民の多くがいささか平和ぼけという傾向にある。そのために自国の領土、領海、領空を守るのは国民一人一人の責務であるという意識が希薄であり、国防を軽視する傾向さえ見られる。また戦争を起こさせないための手だてをこうじることさえも、タブー視する向きもある。

 ソビエトのウクライナ侵攻から3年を経ても、今だ戦争は終結していません。中東の戦禍も広がりをみせており、加えて東アジアにおいては台湾有事のおそれがあり、各地の地域紛争も後を絶たず、地球全域における戦争に対する懸念が大きく広がっています。国連のはたらきも形骸化して、なすすべもなく、力あるものにまかれてしまい、人類の理性は大波にのまれてしまっているかのようです。

 他国で起こっている戦争を報道するにつけても、マスメディアは多分に偏向ありと受け取れるものや、直接現地取材した一次的情報でなく、受け売りによる情報を流すものが増えてきたように思える。したがって、ユーチューブなどのネットによる情報のほうが事実関係において正確であったり、戦争や事件についての背景が的確に捉えられ、かつ迅速で、複眼的であったりしていることから、マスメディアからネットに人々の関心が移ってきたようです。情報媒体と双方向受発信の変化が顕著になってきました。


国破れて山河あり、城春にして草青みたり

 地球の裏側で起こった出来事も、瞬時に伝わる昨今です。しかも情報の媒体もネット社会においては多彩であるから、大量の情報から信憑性のものを選択して、それを正確に受けとめることができるか、それが現代人に課された課題になってきたようです。受信能力と分析能力を自分で身につけていかねばなりません。AIの発展は著しく、情報との向き合い方が、あたらしい課題のようです。

 ロシヤとウクライナの戦争や中東での戦争は、戦争当事者間において多くの犠牲がともなっています。さらには東シナ海での戦争も起こるかもしれません。戦争にともなう経済的不安も全世界に広がっています。混迷を深める世界の動向に、どの国も無関係でありえないのです。どのように向き合っていけばよいのか、私たち一人一人の課題でもあります。

 いずれにしても人間の欲望が争いを引き起こす。民主主義であれば万民の意向が反映されるでしょうが、独裁政権においては、それが軍や党であろうが、専制君主や宗教主であろうが、中央集権のもとに独裁化して粛正や言論統制、排他行動がすすむと、戦争という暴挙に及んでしまうのです。愚かな人間という生き物の性でしょう。とりもなおさず、自我の三毒、貪
(とん)・瞋(じん)・癡(ち)(むさぼり、いかり、おろかさ)という煩悩がそうさせるのです。そして人々は悩み苦しむのですが、その愚かさを識っているのも人間です。命の尊厳と信頼の醸成をないがしろにすれば、その国はいずれ滅亡するでしょう。

 「国破れて山河あり、城春にして草青みたり」これは中国唐代の詩人、杜甫が戦乱で荒廃した都のありさまを嘆き、くらべて自然は変わらないと、人間の愚かさをうたったものです。このところの戦争は、独裁国家と、民主主義の国との戦いという傾向も見て取れますが、いずれにしても無益な人間の蛮行に過ぎない。戦争に勝者も敗者もありません。社会は崩壊し、互いの憎しみが残るだけです。

不確実性の時代を生きる・・・五つのキーワード

 今という不確実性の時代に生きる私たちは、何をもって認識や判断の基準とすればよいのでしょうか。ご自分の悟りの体験をもとにして、人の生き方を説かれたのがお釈迦さまです。それは二千五百年前の教えであるけれど、真実であるがゆえに、現代人にもあてはまります。不確実性の時代を生きるためのキーワードがあるとすれば、以下の5つでしょう。、 

その一、四苦八苦
 この世を娑婆
(しゃば)、憂(う)き世ともいう、四苦八苦の苦しみに耐えて生きていかねばならないところという意味です。悩み苦しみの消え去ったところが涅槃(ねはん)、その理想郷のことを彼岸ともいう。それは遠きに非ず、日々生活する現世が涅槃・彼岸そのものであるとお釈迦さまは説かれた。では、なぜ人は悩み苦しむのか。お釈迦さまのご出家の動機がここにあった。

その二、どっこいしょ
 それは自己の受信器官である六根すなわち、眼・耳・鼻・舌・身・意が自己中心的であれば、強欲の心がはたらき、なにごとも意のままにならないことから、苦と受けとめてしまう。これが自我欲望の煩悩です。懺悔
((さんげ)して煩悩の炎を消し去るべし。それが六根清浄(ロッコンショウジョウ)・・・「どっこいしょ」です。

その三、無分別
 人は善悪、明暗、好き嫌い、優劣、貧富などと二辺で受けとめてしまう。人間の心は二辺すなわち二つの考えが絶えず争いがちで、これが心の病です。この分別心を捨て去れば、すなわち無分別の智慧を身につけておれば道を違えない。弦楽器の絃は強すぎると切れてしまう、緩すぎると音が出ない、強すぎず緩すぎず頃合いに張るべし。さすれば、いい音が出る。

その四、露泡の如し
 海辺の砂で造ったものは波に消し去られる。この世に変化しないものはなく(諸行無常)、永遠不滅のものなし(諸法無我)。有と無の両極端を裁断し、我執を放下し、宇宙の真理に自己を同じくすることで安楽の境地に入る(涅槃寂静)。
 原因と条件(縁)が仮に和合して、すなわち関係性のなかですべてが存在している。この世は因縁生起・縁起
(えんぎ)なり。ですから、人は、自分にとって損か得かで判断してしまうことがあまりにも多いけれど、それは了見の狭い利己的なものであって、世間では利他的に行動しなければ息苦しさを感じる。この世の全てが縁による関係で成り立っているから、利他がこの世の大原則です。

その五、心静かに
 気持ちが動揺していると、心が乱れた状態になる。気持ちが落ちつけば、善いとか悪いとか、好ましい好ましくない、などという区別もなくなる。仏道では自己をわすれ万法に証せらるることを、さとりという。そして仏道とはさとりの実践です。道元禅師は修行とさとりは一つのものとされた。だから、行住坐臥すなわち、日常が仏道で、さとりを行じる、それが生き方です。いつでも、どこでも、片寄らず肩肘張らず、姿勢正しくゆっくり吐く呼吸法で心静かになれる。これが禅定(只管打坐)で、お釈迦さまのさとりのすべてです。

 「勝つ者、怨みを招かん。他に敗れたる者、苦しみて臥す。されど、そのいずれをも棄て、こころ寂静なる人は、起居ともにさいわいなり。」
 これはお釈迦さまのお示しになられた、法句経にある言葉です。上記の5つのキーワードが不確実性の時代を生きるためのよるべとなるでしょう。

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