2003年10月1日 |
第57話 二つの星 大空に 心の月を ながむるも 闇に迷いて 色にめでけり 道元禅師 |
中天に輝く月は美しい、心の闇に迷い、形の美しさのみをめでて、本当の月の美しさを知らぬのは悲しい |
宇宙の星 9月9日、晴れた夜空に月と大接近の火星が並んで輝きました、すばらしい天体ショーでした。 空気の澄み切った秋空に冴えわたる月の美しさは格別です、ススキを生けて、ゆでた里芋を盛り供えます。満月をめでたきものとしてあがめる人、豊作を喜び感謝する気持ちをこめておがむ人、さまざまに月見を楽しみますが、現代では夜の明かりが多すぎて、市街地では月明かりが皓々と降りそそぐという感じがなくなりました。 また月の輝きに心おどらせ、満月の次に十六夜(いざよい)の月、立待(たちまち)の月、居待(いまち)の月、臥待(ふしまち)の月、有明(ありあけ)の月などと、月の満ち欠けを気にとめる、また、天地自然の恵みをいただく暦として月をあがめるなど、自然と同化した生き方を現代人はしなくなりました。 宇宙にまで人間の活動範囲が広がり、30年も前に人類は月に到達して月面を踏査した、荒涼とした月には生物はいなかった。月面からはるかかなたの地球の姿をカメラがとらえ、地球の地上で月を見るのと同じように、月の地上から見た地球の青き輝きの美しさに感動しました。 宇宙の星のかけらが無機物です、地球の原料となった隕石に含まれていた物質が二酸化炭素や水などの無機物です。月と地球が大きく違うのは、絶妙のバランスによって地球には生命が誕生したということです。38億年前の岩石から、光合成によって作られたと考えられる堆積岩が見つかっています。二酸化炭素に覆われた地球に、無機物からやがて有機物をつくる生き物が現れ、光合成をする植物があらわれ、酸素がいっぱいに生み出されて、有機物の生き物である動物が地上に生息するようになりました。 |
食物連鎖 地球の生き物は食物連鎖によってすべてが関係しています、食物連鎖はおおまかに生食連鎖と腐食連鎖とにわけられます。食物連鎖において、物質は無機物になったり有機物になったりして、動植物や細菌の間を循環しています。食物連鎖の関係は原核生物しかいなかったような時代から始まっています。 生食連鎖の流れは「緑色植物→草食動物→小型肉食動物→大型肉食動物」 実際には食べられないまま終わる動植物がほとんどです。腐食連鎖の流れは「有機堆積物→動植物→バクテリアや菌類→腐食者→肉食動物 」 生食連鎖しなかった物質 (たとえば、植物の落ち葉、枝、根、幹、動物の遺骸)は、腐食連鎖をたどる、これらの物質は細菌や菌類などによって分解され、複雑な有機物は無機物に還元される。そしてこの無機物は植物に利用され、再び生食連鎖なり腐食連鎖なりへ利用されていく。 光合成は、植物が光のエネルギーを利用して、二酸化炭素と水からグルコース(ブドウ糖)などの炭水化物を作り出す、その副産物が酸素ですから、植物の光合成によって動物は酸素呼吸ができて生きていけるのです。動物の進化によって、60兆個もの細胞からなる人類が現れました、人類の進歩はあらゆる発明によるけれども、いまだ人類の力でも、光合成を人工ですることができません。 生物はタンパク質からできているが、そのタンパク質はアミノ酸によって形成されている。アミノ酸は全部で20種類あり、その並び方によってタンパク質の性質が決まる。アミノ酸のならべ方を伝える物質が、DNAで、生命の特徴として、遺伝はDNAという物質によって情報が伝達され、子孫に受け継がれていきます。 |
一切の生き物は同じ時間と空間を分け合って生きています 作家C・W・ニコルさんは、カナダ北極地帯を旅したとき、ある体験をしたことが、その後の生き方を変えたと言う。それはイヌイットと同じ暮らしをした時、北極の大地と海から食べ物をもらい、そこに暮らしていると、そこに生息する動物の一員となった自分がそこにいることに気づいた。トナカイも北極クジラもシロイルカも、他の動物たちも、けっして自分を怖がらなかった、すぐそばまで来て餌を食べている。まるで動物達が感じていることと、人間である自分の感じていることとが同じであるかのように思えた。動物達が自分の存在を理解してくれている、ここにいる動物達と自分が同じところにいる、彼らのおかげでここに存在している。この体験がその後のニコルさんの生き方を方向ずけたのです。 一切の生き物は同じ時間と空間を分け合って生きています、C・W・ニコルさんが癒され安らいだのも、このことに気づいたからでしょう。 ニコルさんは「森の恵みは川を伝わり海へ流れ出で、やがて人の住む大地へと還る」という確信を得て、自ら長野県の黒姫山麓の荒れ地に住まいして、手づくりで広々とした森を育てています。その森で、木々のざわめきや、動物たちの息づかいを感じることが、ニコルさんの至福の一時なのです。 |
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