第75話 2005年4月1日 | ||
花まつり 天にも地にも一人なる 尊き我に目覚めよと 教えたまいし法(のり)の花 後の世までも香るなり |
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甘茶 「花まつり」には花御堂に誕生仏をまつり甘茶をおかけして祝います、お釈迦さま誕生のとき竜が天からやってきて香湯をそそいだという言い伝えにもとずき、産湯にあたるものとして灌仏桶に甘茶を入れ、ひしゃくで誕生仏に甘茶をかけます。 中国では香味料入りの糖水が用いられたが、日本では甘茶を誕生仏にそそぎます。甘茶はアマチャの乾燥葉を煎じたもので甘みのある飲み物です、それで飲み物として参拝者にもふるまわれます、ところによっては甘茶で習字すると上達するとか、害虫よけのまじないにもなっています。 関西の花祭りは5月8日に行われます、花まつりとともに京都や丹波地方では「8日(ようかび)の墓まいり」としてご先祖の墓にも供花します、また亡くなって間がない新仏さんに供花する「花折まつり」の風習もあります。 農耕のまつりごととして、庭に長い竹を立てて、その先に十字に花を結びつけて飾る「天道花(てんどうばな)」がありました、花はその頃、山に咲く桃色のねばツツジとかシャクナゲが用いられる、農事の祀りとして田の神様を招き入れて豊作の願いをする丹波地方の民間習俗です。 花御堂を諸々の草花で飾る供花を摘むところから花摘(はなつみ)ともいいます「8日の花摘の山遊び」は、女性の参加が特徴的な風習の一つでした。 花祭りに合わせおこなわれたこれらの民間習俗は近年なくなりつつありますが、お釈迦さまのお誕生を祝う花まつりが、地方の風習とともに行われてきたということは、「花まつり」が人々の生活に密接に関係する年中行事の一つであったからです。 |
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天上天下、唯我独尊 森羅万象はすべて生まれ滅しています、一切の命は自然界の生死のめぐりによるものです、お釈迦さまのお母さまマーヤさんはお釈迦さまをお産みになって7日目に他界されたと伝えられています、お釈迦さまは生まれながらにして世の無常を体得されたのです。 命が命を産み命が命を育み生かす、すなわち一切の生き物は他を生かし、他に生かせてもらっているという大原則があります、自然界はすべて自己を超えた利他によってつながっているといえるでしょう、生きているということは、自分のために生きているようであっても、他のために生きているということです。 この世に三千万種の生き物が生存しています、そのどの生き物もみんな生かし生かされあいしている、すなわちすべての命がお互いを支え合ってる、「天上天下、唯我独尊」とは命の尊厳を讃える言葉であり、人も生き物もすべてみな共生きであることを讃え喜ぶ言葉でもあります。 生きとし生けるものはみな森羅万象の自然界のめぐり合わせによって生まれ死んでいく命です、何億年もの時間を経た命の連続において、あなたもそして私も、生きとし生けるもの一切が、かけがえのない存在として、命を支えあい、生かしあうために、この世に生まれてきて、今、ここに生きています。だから何万年にわたり人類の祖先は森羅万象の自然のめぐり合わせの恵みに畏敬の念を忘れなかった、それがいつ頃からでしょうか人は自然の支配者だと思うようになってきたようです。 |
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生きとし生けるものみなを慈しむ 日本はストレス社会でしょうか、年間に自殺者が3万人を超えています、児童虐待、雇用や老後の不安など、悩み多き人々が多いようです。どの人も自然界のめぐり合わせによってこの世に必要だから父母のもとに生まれてきました、かけがえのない命です、だから他人が人の命を奪うことはできない、戦争もテロも同様です、自らが命を絶つ自殺も許されるものではありません。 この世にはさまざまな生き物がいますが人間だけが欲望すなはち煩悩のために自ら悩み苦しみ、あげくのはてに自分の足下すら見えなくなったり、歩むべき方向を見失なったりしています。現代人の多くは人間の社会しか見えていないのでしょうか、森羅万象の美しさに感動し、生きとし生けるものみなを慈しむ、やさしさの心を失なってしまったのでしょうか。生きとし生けるものみな欠くべからざる命だから、名古屋で開催されている万国博のテーマの通り、人類と自然との共生は21世紀の課題です。 時々、野の花に目を向けて、山野の中に身を置いて木々の芽吹きや風の薫りを感じて、鳥の声に耳を傾け、潮騒に心躍らせましょう。発想の転換をして生命に対する見方や考え方を、万物生命の側から自分の命を見るという視点に変えてみませんか、生きとし生けるものみなを慈しむ、やさしさの心に気づくはずです。 一人の聖者の誕生を祝う「花まつり」(降誕会)は、生きとし生けるものすべてが、この世に生を受けたことを喜び、命の尊さと、共生きの大切さを教えるものです。卯月8日のお釈迦さまのお誕生を祝う「花まつり」の日を、産み育ててくれた すてきな父母に心の花束を贈る感謝の日にしませんか。 |
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