Kyoto Shimbun 2002.06.10 News


 死後の安心 永代供養墓
 京でも希望者増える
 核家族化や少子化を背景に、跡取りがいなくても寺院や霊園にお墓を永遠に供養、管理してもらえる「永代供養」を希望する人が京都でも増えている。供養の形式や石仏も選ぶことができ、「安心して死後を託し、生きた証(あかし)を残したい」という人々の心をとらえているようだ。

 京都市左京区高野の無礙光院(むげこういん)は昨年九月、永代供養墓「やすらぎの塔」を墓地内に建てた。合同の土台に花立てや線香立てを備えた小さな石塔を並べ、下に遺骨を納める。

 最初に契約した近くの谷内栄さん(82)と綾子さん(82)夫妻は「孫は女の子ばかりで、墓を見てくれるか分からない。宗教も決まっていないし、ここなら安らかに眠れそうと飛びつきました」と笑顔を見せる。阪口慈航住職(58)は「檀家からお墓の後継者についての相談が増え、跡取りのない人のために必要だと痛感した」と話す。

 亀岡市千歳町の神応寺では、如意輪観音や千手観音など自分で好きな石仏を選べる。安達瑞光住職(53)によると、「途絶えた母の家系を供養したい」と息子が建てたり、「戦死した夫の供養を」と老妻が購入している。妻の顔に似た石仏を注文した人もいるそうだ。

 横浜市在住の笹木美代子さん(66)は、ここに釈迦(しゃか)の石仏をすでに建てている。「独り身にとっては、墓のことを心配せずに死後を安心できるのが一番。石仏にもう一人の自分を重ね、二人三脚で生きていこうと思っています」と話す。ほかにも地蔵型や合祀(ごうし)型など五種類の永代供養墓があり、二年ほど前から問い合わせが増えたという。

 京都では、ほかにも遺骨を最初から合祀する誓願寺墓地(中京区)内の「供養塔」などもある。

 「仏事ガイド」編集部(六月書房)の林茂雄さんによると、永代供養墓が全国的に広がりを見せてきたのは五年ほど前から、という。

 生前に申し込みでき、寺院の供養が永久に受けられるのが特徴で、林さんは「これまで寺は家を単位とし、跡継ぎがいない個人に対応できていなかったが、受け皿がやっとできてきた。ライフスタイルに合ったお墓も選択でき、永代供養墓が支持されているのでは」と指摘している。

写真=好みで選んだ石仏に、もう一人の自分を重ねる人も(亀岡市千歳町・神応寺)